グローバルな視野で 教育を

最近グローバル人材育成という言葉をよく耳にするようになったが、日本はグローバルビジネスパーソンが育ちにくいと言われている。これは諸外国に比べると言語においても文化においても多様性の少ない日本という国の宿命と言えるかもしれないが、世界のボーダレス化は益々加速傾向にあり、外国の言葉を操ること、互いの違いを認めること、違いを伝え理解を得ること、合意点を見出し次に進めることは、世界では普通のコミュニケーションプロセスである。海外で日本語教育を行う補習校の立場から、グローバル人材として明日の日本を背負って立つ人材の育成の可能性について考えてみる。

 

グローバル人材とは

 文部科学省・経済産業省「産学人材育成パートナーシップ グローバル人材育成委員会報告書」では、グローバル人材について、以下のように定義している。

 「グローバル化が進展している世界の中で、主体的に物事を考え、多様なバックグラウンドをもつ同僚、取引先、顧客等に自分の考えを分かりやすく伝え、文化的・歴史的なバックグラウンドに由来する価値観や特性の差異を乗り越えて、相手の立場に立って互いを理解し、更にはそうした差異からそれぞれの強みを引き出して活用し、相乗効果を生み出して、新しい価値を生み出すことができる人材」。

 次に、日本経済団体連合会の「2010年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査」にはグローバル人材の資質としてとりわけ重要だと考える資質を以下のように挙げている。

●様々な価値観を持った従業員と意思疎通を図ることが

 できるコミュニケーション力(35.2%)

●変化し続ける時代を見極め、常に問題意識を持ちながら

 働くことができる課題解決力(26.4%)

●多様な属性を持った従業員をリードすることができる

 リーダーシップ力(23.5%)

●机上で物事を考えるだけでなく、実際の行動に移すことが

 できる実行力(13.1%)

●特定領域(経理、法務、財務、知財等)に関する

 専門的知識(0.5%)

 

グローバルな視野を育てる環境

 アメリカは周知のとおり高度に多様化の進んだ社会である。言葉や文化、習慣が違う様々な人々が混ざり合って生活をしているため、違いやギャップは日常の中に無限に存在する。したがって、自分の権利や主張をぶつけ合い、互いの合意が得られるまで問題の解決に取り組み、一旦合意が成立すれば握手をして恨みっこ無しというコミュニケーションのスタイルが必然と構築されていく。アメリカの子ども達はこれを小さい頃から目にし、体験して自然と身につけていく。アメリカで生活する日本人の子どもたちは、外国人としての違いを肌で感じて生活しているはずだが、その違いを認められ、尊重されているという経験も豊富に持てるので、やはりアメリカはグローバルな視野を育てる環境としては日本より進んでいるといっていいだろう。

 

アメリカでの教育

 アメリカでは、親も教師も子ども達に「あなたはユニーク(かけがえのない存在)で、愛を受ける価値のある存在である」と繰り返し語りかける。そして「あなたの隣にいる人も同じようにユニークで価値のある存在である。だから大切にしなさい」と続ける。この考え方はキリスト教の教えにも通ずるところがあるが、民主主義の基本的な考え方にもなっている。そのような環境の中で、子ども達は次のようなことを、体験を通して学ぶ。

●世の中には自分と違う色々な人がいて、

 それはすばらしいこと。

●そんな中で自分の権利や主張をはっきりと

 相手に伝えることは大切なこと。

●意見が食い違っても相互の主張をぶつけ合い、合意点、

 妥協点に向かって歩み寄りができること。

●相手の意見と自分の意見の良いところを

 双方の利益のために活かすことができること。

●双方が納得すれば以前よりも深く、よい関係を構築できること。

 アメリカで育つ子ども達は、このような環境の中で受け入れられ育っている。アメリカの学校で「自分自身の価値、そして周りの人に対するリスペクト」を学ぶ子ども達の中にはたっぷりとグローバル人材の元となる素地ができているのだ。

 

学校生活で育まれるグローバルな資質

 日本から渡米して間もなく転入してきたA君。英語の勉強では相当苦労しており、時間を見つけては英語の勉強をしていたが、ある日、その様子を見ていた同じクラスのアメリカで生まれ育ったB君が、彼の英語の宿題をサポートし始めた。彼らは同じように2つの言語で勉強をしているクラスメートだが、日英言語の能力のバランスはまったくの逆。渡米後間もない生徒は簡単な問題も英語では辞書を引かなくては理解できず、一方アメリカ永住の子は日本語では小学校の国語の教科書を音読するのもおぼつかない。2人の様子を興味深く見ていると、彼らは互いの弱い部分を補い合うように勉強を助け合いはじめた。A君はB君の日本語の勉強を、B君はA君の英語の勉強をサポートし始めた。それぞれが自分の得意分野を活かして相手の弱い部分を助けるということを誰からも教わることなくやり始めたのだ。互いの違いを尊重し、そして互いの必要を満たす姿勢は、彼らの絆をとても強いものとしていった。このような姿勢こそが、グローバル人材の資質としてとても重要なものとなるのではないだろうか。

 

補習授業校の働きと人材育成

 アメリカで2つの言語と2つの文化の中に生活し、学習している子ども達は、必然的に高い言語能力、コミュニケーションスキルを身につけていく。しかし、彼らの本当のアドバンテージは言語の力だけではなく、高い人間力につながる広く多面的な視野、柔軟な考え方、弱い立場のものの痛みを知る力、互いを活かしあう方法などを自然に学ぶことができる環境にいるということである。前述のグローバル人材の定義や資質を考えると、まさにアメリカで学んでいる子ども達の持っている人柄や品性と重なっているのがよくわかる。2つの言語、2つの文化の中で生きている子どもたちは、自らが意識するしないにかかわらず、日々その環境においてグローバル人材となるトレーニングを受けているのだ。それを考えると、海外にある補習授業校として彼らの成長過程を見るということは、将来の日本を背負って立つバイリンガル、バイカルチャーのグローバル人材育成に深く関わっているのだということを再確認させられ、ピリッと気が引き締まる思いがする。

 

情報提供:三育学院サンタクララ校

教諭 吉田栄一

www.saniku.org

 

トップへ戻る

 

グローバル社会で通用する英語力を養う

吸収力が高い子供たちは、渡米後比較的短期間で英語を話し、数年でペラペラと喋るようになる。しかし、日常生活で耳から覚えた英会話は、使わなくなると忘れるのも早い。高校卒業後にアメリカの大学に進学する場合も、日本の大学へ帰国生枠で進学する場合も、英語力は合格の要となる。ボキャブラリーや文法、エッセイなど「身に付き、残る」英語力を身に付けるためのポイントを見てみよう。

 

 

生活の中での英会話

 日常生活でよく使うフレーズは、意識的に反復して使うことで覚えていくのが良いだろう。挨拶などの短い単語からはじめ、映画やドラマの台詞へステップアップ、最後は大統領や著名人による名演説のフレーズをまるごと身につけていくのが効果的だ。反復練習によって自然に英語が頭に入り、話し言葉としての英語力を鍛える近道となる。また、日本へ帰国すると、英語に触れる機会が著しく減ることで英語力は低下する。アメリカで鍛えた英語力を維持・向上し続けるためには、日本にいながらアメリカ生活で経験したような英語のレッスンが受けられる、Vantageなどのオンラインクラスを活用して英語力の維持に努めることをおすすめする。

 

大学受験を視野にいれた読み書き能力

 子供たちにとって大学受験は将来的に避けて通れない道だ。日本の大学へ帰国生の枠で受験する場合も、アメリカに残って大学に進学する場合も、SAT(Scholastic Assessment Test)とよばれる共通テストのスコアが重要なポイントになる。SATは大きく分けると論理的思考(文章読解、論文)と数学から構成される。英語での会話が流暢にこなせるだけでなく、書き言葉としての英語力を身につけておく必要がある。SATの文章 読解を攻略するには英文法・語彙力をしっかりと身につけたうえで、正確な英文理解をすることが大切である。このためにも、普段から英語の新聞・雑誌・本を読み、内容をまとめたり要約する訓練を重ね、読み書きの側面から英語力を向上させることが必要。なお、SATの小論文では専門的な知識よりも、基礎的な読解力・思考力が問われる傾向にある。普段から時事問題や社会情勢に目を向けて情報収集すると同時に、思考力を鍛えて自分の意見の妥当性をしっかりと文章で書くことが要求される。このような英語力を身に付けるにあたって重要なのは、やはり日頃の積み重ねである。ちなみに、アメリカの大学を受 験する時は、SATは3回程テストを受けるのが一般的であり、 日本の場合は合格スコアに達するまで何度でも受けることができる。

 

E-Tutorについて

 日本へ帰国すると英語に触れる機会が激変するため、英語力の維持は帰国者の共通の悩み。そのようなときに活用したいのが、オンライン上で個別指導を受けられる「イーチューター」だ。自宅などにいながら好きなときにネイティブな英語を学ぶことができるため、日本に帰国してもアメリカで鍛えた英語力を維持・向上したい場合に便利だ。教材をダウンロードすれば自分のペースで繰り返し学習ができる上、わからないところは日本語でも英語でも質問できる。

 

情報提供:Vantage School

www.vantageschool.com

 

トップへ戻る

Copyrigh©2020 Inter-Pacific Publications, Inc. All Right Reserved

グローバルな視野で 教育を
グローバルな視野で 教育を