YASU&RYU.Inc, FUGETSU USA.Inc

President / CEO

山本 泰光 氏

サウスベイを中心に、和食ダイニング「ROKKO」、本格居酒屋「えん」、日本焼肉「力」、ラーメン「香風」や、お好み焼き「鶴橋風月」など10もの飲食店を経営する山本氏。現在も現場に立ち続けトレンドの変化や客の機微を肌で感じ続ける彼に、同じ屋号の多店舗展開ではなく異なるジャンルでの複数経営を行う理由や、ベイエリアの日本食事情、アメリカでの事業展開について伺った。

 

目の届く範囲でビジネスを最大化する

 最初から多ジャンル展開を目論んでいたわけでなかったですが、結果としてはそれが現状うまく回っています。私は日本で大学卒業後3年ほど商社で働きましたが、阪神淡路大震災で被災したのがきっかけで「いつ死ぬかわからない、今やりたいことをやろう」と、死生観がだいぶ変わりました。兼ねてから飲食業をやりたかったこともありますが、どうせやるなら、とアメリカで事業展開を狙いました。渡米後は3年間レストランで働きながらノウハウを学び、29歳でモーガンヒルに初めて自分の店を出店。その後はサニーベールで「ROKKO」、ラーメン屋など展開することになり、今では居酒屋、ラーメン、焼肉、お好み焼きなど異なるジャンルの飲食店を計10店舗経営しています。全ては「縁」がきっかけでした。一生懸命やっていると仲間が集まってくる、そうしているうちに「この店をやらないか?」と相談を受けることも多くなり、現在に至ります。

 ビジネスを広げていく際には、主に範囲を広げるか、種類を広げるかになりますが、私の場合は自分の目の届く範囲で行いたかったというのもあります。何かあったらすぐに行ける範囲、従業員の顔がわかる範囲がいいとなった場合に、狭い範囲で同じ店を展開するよりかは、焼肉やお好み焼き、ラーメンなど色々なジャンルがあった方が面白いなと思ったのも理由です。

 

人材が店の未来を左右する

 とはいえ、アメリカで一番苦労したのはやはり「人材」です。募集をかけると、サーバーもキッチンも、まず日本食を見たことも食べたこともない人がやってくる。ある程度の知識や礼儀を知っている日本人を採用するのとは、スタートから全く異なってきます。言葉も文化もコミュニケーションも違う人たちに日本の食文化やサービスを教えるのはとても心を砕きます。「教育」と捉えると相手も拒絶しがちですが、私の場合は、店で働くことに何かしらのベネフィットを感じてもらえるように努力しています。例えば、日本文化を学べる、面白い、チップがいい、料理のスキルが上がる、など、働くスタッフには採用面接の時にじっくり話を聞き、彼らと目的やゴールを共有できるように働きかけています。そうすることで彼らの勤続年数も伸びますし、モチベーションも上がり結果的にサービス向上に繋がっていくと考えています。また、自分が「ROKKO」を中心に店に立ち続けることによって、スタッフに対しても働く姿勢やビジョンを体現できますし、話をするにも血が通った話ができる。自分の感覚を鈍らせないためにも、僕自身今後も現場にはい続けたいですね。

 

「何をやるかより、どうやるか」

 私の感覚ですと、日本で流行るものは基本的にアメリカでも受けると思っています。ただし、日本のままアメリカに持ってきてもダメ。どういうプレゼンテーション、見せ方をすればアメリカで受けるのかというマーケティングと、前述したような人材の問題が大きなポイントだと思います。材料費はもちろん、人件費や家賃も日本に比べとても高いこのベイエリアでは特に、流行りはするけれど利益が出ない、というパターンも往々に考えられます。また、保健所などの制約が非常に厳しいので、飲食店を開くには日本の10倍ぐらい大変だと思う覚悟がないと難しいのではないでしょうか。また、ベイエリアだけでも次々と新しい店が生まれており、生き残っていくための日々情報収集は欠かせません。ラーメン屋など客の注文が一度で済むようなジャンルでは、サーバーではなくタブレットでのオーダーが今後主流になっていくだろうし、食事以外の体験を提供できるような面白い店も作っていきたいですね。

 

これから起業を考える人へ

 私がアメリカに来た時とは違い、今のビジネスは「根性でなんとか頑張る」ではどうにも立ち行かなくなっています。アレルギーやヴィーガンなど食の趣向はここ数年でさらに幅広く厳格になっており、スタッフの対応や仕入れ先選定、メニュー表記など気を遣うことも圧倒的に増えました。そういった日々の細かな変化を感じ取るためにも現場を含めたマーケティングがとても重要です。時間とお金をかけてしっかりデータ収集、分析し、どうしたら受けるかを考え抜くことが必須。ビジネス的にはやはりアメリカで展開した方が日本よりも遥かに伸びる要素があるのは確かなので、ぜひ今後もいろんな飲食店と一緒に頑張っていきたいですね。

 

 

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YASU&RYU.Inc, FUGETSU USA.Inc

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山本 泰光 氏

サウスベイを中心に、和食ダイニング「ROKKO」、本格居酒屋「えん」、日本焼肉「力」、ラーメン「香風」や、お好み焼き「鶴橋風月」など10もの飲食店を経営する山本氏。現在も現場に立ち続けトレンドの変化や客の機微を肌で感じ続ける彼に、同じ屋号の多店舗展開ではなく異なるジャンルでの複数経営を行う理由や、ベイエリアの日本食事情、アメリカでの事業展開について伺った。

 

目の届く範囲でビジネスを最大化する

 最初から多ジャンル展開を目論んでいたわけでなかったですが、結果としてはそれが現状うまく回っています。私は日本で大学卒業後3年ほど商社で働きましたが、阪神淡路大震災で被災したのがきっかけで「いつ死ぬかわからない、今やりたいことをやろう」と、死生観がだいぶ変わりました。兼ねてから飲食業をやりたかったこともありますが、どうせやるなら、とアメリカで事業展開を狙いました。渡米後は3年間レストランで働きながらノウハウを学び、29歳でモーガンヒルに初めて自分の店を出店。その後はサニーベールで「ROKKO」、ラーメン屋など展開することになり、今では居酒屋、ラーメン、焼肉、お好み焼きなど異なるジャンルの飲食店を計10店舗経営しています。全ては「縁」がきっかけでした。一生懸命やっていると仲間が集まってくる、そうしているうちに「この店をやらないか?」と相談を受けることも多くなり、現在に至ります。

 ビジネスを広げていく際には、主に範囲を広げるか、種類を広げるかになりますが、私の場合は自分の目の届く範囲で行いたかったというのもあります。何かあったらすぐに行ける範囲、従業員の顔がわかる範囲がいいとなった場合に、狭い範囲で同じ店を展開するよりかは、焼肉やお好み焼き、ラーメンなど色々なジャンルがあった方が面白いなと思ったのも理由です。

 

人材が店の未来を左右する

 とはいえ、アメリカで一番苦労したのはやはり「人材」です。募集をかけると、サーバーもキッチンも、まず日本食を見たことも食べたこともない人がやってくる。ある程度の知識や礼儀を知っている日本人を採用するのとは、スタートから全く異なってきます。言葉も文化もコミュニケーションも違う人たちに日本の食文化やサービスを教えるのはとても心を砕きます。「教育」と捉えると相手も拒絶しがちですが、私の場合は、店で働くことに何かしらのベネフィットを感じてもらえるように努力しています。例えば、日本文化を学べる、面白い、チップがいい、料理のスキルが上がる、など、働くスタッフには採用面接の時にじっくり話を聞き、彼らと目的やゴールを共有できるように働きかけています。そうすることで彼らの勤続年数も伸びますし、モチベーションも上がり結果的にサービス向上に繋がっていくと考えています。また、自分が「ROKKO」を中心に店に立ち続けることによって、スタッフに対しても働く姿勢やビジョンを体現できますし、話をするにも血が通った話ができる。自分の感覚を鈍らせないためにも、僕自身今後も現場にはい続けたいですね。

 

「何をやるかより、どうやるか」

 私の感覚ですと、日本で流行るものは基本的にアメリカでも受けると思っています。ただし、日本のままアメリカに持ってきてもダメ。どういうプレゼンテーション、見せ方をすればアメリカで受けるのかというマーケティングと、前述したような人材の問題が大きなポイントだと思います。材料費はもちろん、人件費や家賃も日本に比べとても高いこのベイエリアでは特に、流行りはするけれど利益が出ない、というパターンも往々に考えられます。また、保健所などの制約が非常に厳しいので、飲食店を開くには日本の10倍ぐらい大変だと思う覚悟がないと難しいのではないでしょうか。また、ベイエリアだけでも次々と新しい店が生まれており、生き残っていくための日々情報収集は欠かせません。ラーメン屋など客の注文が一度で済むようなジャンルでは、サーバーではなくタブレットでのオーダーが今後主流になっていくだろうし、食事以外の体験を提供できるような面白い店も作っていきたいですね。

 

これから起業を考える人へ

 私がアメリカに来た時とは違い、今のビジネスは「根性でなんとか頑張る」ではどうにも立ち行かなくなっています。アレルギーやヴィーガンなど食の趣向はここ数年でさらに幅広く厳格になっており、スタッフの対応や仕入れ先選定、メニュー表記など気を遣うことも圧倒的に増えました。そういった日々の細かな変化を感じ取るためにも現場を含めたマーケティングがとても重要です。時間とお金をかけてしっかりデータ収集、分析し、どうしたら受けるかを考え抜くことが必須。ビジネス的にはやはりアメリカで展開した方が日本よりも遥かに伸びる要素があるのは確かなので、ぜひ今後もいろんな飲食店と一緒に頑張っていきたいですね。